2023年3月21日(火)の現地時間午前5時に寝て、13時に起床した。日本の劇的な勝利を目撃した昨夜の興奮で、なかなか寝ることができなかった。
今日でWBCが終わる。最後を締めくくるのは、日本対アメリカの決勝戦。アメリカの野球に憧れを持ち続けてきた日本球界にとって、これ以上ない大舞台だ。
序盤から試合が動いた。2回表、今大会絶好調のターナー選手がソロホームランを放ち、アメリカが先制した。
日本はすぐさま反撃した。2回裏、村上選手の特大ホームランで同点に追いついた。後続の打者が1死満塁のチャンスをつくると、ヌートバー選手の内野ゴロで勝ち越しに成功。4回裏には岡本選手のソロホームランで、日本が3対1とした。
小刻みな継投策に出た日本は、1点リードで9回表を迎えた。ここでマウンドに上がったのは大谷選手。日本が誇るスーパースターは、先頭打者に四球を与えたものの、続くベッツ選手を併殺打に打ち取った。併殺打に興奮した私は、柄にもなく、「あとワンアウト」という意味で、右手の人差し指を高く掲げた記憶がある。
2死ランナーなしで大谷選手が対峙したのは、トラウト選手。アメリカの超強力打線のなかでも最高のバッターだ。野球ファン待望の対決は、トラウト選手の空振り三振で終わった。
これをもって日本の優勝が決まった。私はその瞬間、淡々と写真を撮った。「優勝の瞬間って、こんなに冷静なのか」と感じた。もしくは、現実なのかどうか疑わしく思うほど、夢見心地だったのかもしれない。
試合の終了直後、私はライトスタンドから3塁側に移動した。日本の選手たちが喜ぶ姿を、近くで見るためだ。一方、アメリカサポーターの多くは、早々に球場を後にしていた。アメリカサポーターの人波をかき分け、3塁側へ移動しているときに、私は優勝を初めて実感した。
印象に残ったのは、アメリカのシュワーバー選手の打席だ。5回表2死1、2塁の場面で、カウントは3ボール0ストライク。このカウントでは1球見逃すことが一般的だが、シュワーバー選手は打ちにいって、センターフライに倒れた。シュワーバー選手、そしてアメリカ代表が精神的に追い込まれているように見えた。
選手のプレー以外にも、面白い場面がたくさんあった。
例えば、打撃練習時のワンシーン。60代くらいの外国人男性がグローブを持ち、外野の2階席に陣取っていた。日本ではなかなかお目にかかれない、元気なおじいさんだ。その男性は見事に、大谷選手のホームランボールをダイレクトキャッチした。捕ったボールを、嬉しそうに高く掲げていた。
試合開始前のセレモニーは、エンタメ大国・アメリカらしい派手な演出だった。球場中の無数のライトが光るなか、ライト側からアメリカ代表、レフト側から日本代表がそれぞれ一列になって登場した。アメリカ代表はトラウト選手、日本代表は大谷選手が国旗を持ち、先頭を歩いた。
全観客のうち、6、7割がアメリカを応援していただろう。それに対して、レフトスタンド後方では日本に対する鳴り物の応援が響いていた。ライト側の席でも応援歌を歌う場面があったが、ひとたび「U!S!A!」コールが巻き起こると、日本の応援はすぐにかき消されてしまった。